■ 嬉しくなった日
お店の前で雑巾を洗っていると、後ろからバイクの音がしてきました。
振り返ってみるとバイクに乗った年配の女性が不思議そうな顔をして「ここはミシン屋さんだか?」と尋ねてこられます。
私が「そうですよ。」と答えると聞きたいことがあるとの事なのでお店の中に案内しました。
お話を伺うと、ミシンが故障して困っていたら知り合いから岩手ミシン商会に行けば直してくれるとお聞きになったそうです。
八十歳近い年齢だとおっしゃっていましたが、バイクに乗り移動されている姿はとても健康的で若いお祖母さんでした。
それから一頻りご自身のお話をお聞かせ下さいました。
本当は学校に行って勉強したかったが父親に「女子は学校より手に職を付けろ。」と言われ和裁を習い、浴衣や着物を縫って稼いできた事。
嫁にでる時に父親から高価な足踏みミシンを持たせてもらい、農作業の傍らでミシンを踏み子供達の服を縫ってあげた事。
今でも納屋にその足踏みミシンがあり、今は旦那様が縫い物をされているそうです。
現在ご使用されているミシンは二十年数前に旦那様から贈られた、当時一番新しい刺繍機能付きコンピュータミシンでした。
解らないことは説明書を読んでミシンの機能を使いこなし頑張ってきたが、ついに故障してしまったそうです。
機能を使いこなせずミシンを諦めてしまう方も多い中ですごいことです。
しかし、直してあげたくても古い年式のミシンなのでどうにもならない時があります。
詳しく故障状況をお聞きすると大事なところは生きているようで何とか直せそうでした。
「直せると思いますよ。」と答えると嬉しそうなお顔をされて、そのミシンを今度お持ちいただくことになりました。
古いミシンを大事に使ってくださるお祖母様にお会いして嬉しくなった日でした。
当店を選んでくださったお祖母さま並びに紹介してくださった知り合いの方、ありがとうございました。
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